涙の先に、光がある(第1部)

崩れゆく日々

秋の風が冷たさを増す朝。リビングには散らかったおもちゃ、畳まれないまま積み重なった洗濯物、子供が持ってきたプリント類が山積みに放置されていた。片付けなきゃ、と思う。でも、その気力さえ湧かない。

時計の針が進む音だけが静かに響く。

最近、ずっと頭が痛い。ここ数日はめまいと吐き気もひどい。夜、ベッドに入ってもなかなか眠れず、眠れても悪夢ばかり見る。気づけば朝になり、疲れが取れないまま仕事に向かう。

「ママ、行ってきます」

上の子の声に反応するも、うまく笑えない。ただ、頷くだけ。
上の子が学校で問題を起こしていたことも、子供が何に悩んでいたのかも、私は気づけなかった。

仕事は毎日、目が回るほど忙しい。兼業中の私は半年ほど前の人事異動で、新しい業務を任された。それ以来、仕事がさらに激化し、細かいミスが増え、上司の叱責が増えた。自分の努力が足りないんだ。そう思いながら、必死でこなしてきた。

そんな中、下の子が微熱を出した。朝の機嫌も悪い。それでも私は「仕事を休めない」と思い、無理をさせて保育園へ預けた。後ろめたい気持ちを抱えながらも、「仕方ない」と自分に言い聞かせるしかなかった。結局、保育園で高熱を出した。病院へ連れて行くと、診断は「プラズマ肺炎」。「ごめんよ、息子・・・」

そして、決定的な瞬間が訪れる。

上の子供から渡された、一通の手紙。
幼い字で書かれたその言葉を読んだ瞬間、何かが心の中で音を立てて崩れた。

「ママはいつもイライラしている」

小さな手で一生懸命書いたのが伝わる文字。
その文字が、私の心を深くえぐった。

気づけば、涙が溢れていた。止めようとしても止まらない。嗚咽がこみ上げる。こんなにも大切な存在を、私は後回しにしてしまっていた。

「……ごめんね……」

それしか言えなかった。すると、小さな手が私の背中に回り、ぎゅっと抱きしめられた。

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